荷役作業とは?主な作業内容や安全対策・注意点をわかりやすく解説
物流業務に関わるなかで、「荷役作業にはどこまでの業務が含まれるのか」「荷待ちとは何が違うのか」「どのような安全対策や資格が必要なのか」と疑問に感じることはないでしょうか。荷役作業は、貨物の積み込みや荷下ろしだけでなく、倉庫への入出庫など、荷物を動かすさまざまな工程に関わる作業です。
荷役作業では、人の手で貨物を扱う場合もあれば、フォークリフトやクレーン、コンベヤなどの機械を使用する場合もあります。重量物を扱ったり、トラックの荷台で作業したりすることもあるため、作業内容に応じた安全対策が欠かせません。
今回の記事では、荷役作業の意味や読み方、主な作業内容、荷待ちとの違い、使用する機械、起こりやすい事故・リスク、安全対策、関係する資格やガイドラインについて解説します。荷役作業の内容を知りたい方や、物流現場の安全性を見直したい方は、ぜひ参考にしてください。
荷役作業とは

荷役作業とは、貨物を輸送機器へ積み込んだり荷下ろししたり、倉庫やヤードなどへ入庫・出庫したりする作業を指します。物流では、輸送と保管をつなぐ重要な工程の一つです。作業範囲を正しく捉えるために、読み方や具体的な範囲、混同しやすい荷待ちとの違いを押さえておきましょう。
荷役の読み方
「荷役」は一般に「にやく」と読みます。厚生労働省の「職場のあんぜんサイト」では、「にやく」のほか「にえき」ともいうと説明されています。
もともとは船荷を上げ下ろしする作業を表す言葉として使われてきましたが、現在では陸上物流でも広く用いられています。トラックへの積み込み・荷下ろしや、倉庫への入出庫など、貨物を取り扱う作業を表す際に使われる言葉です。
物流現場や物流事業者のWebサイトなどでは「にやく」と読まれるケースが多いため、この記事でも「にやく」として扱います。
荷役作業の範囲
荷役作業は、トラックから貨物を積み下ろす作業だけを指すものではありません。厚生労働省では、輸送機器への積み込み・荷下ろしのほか、倉庫やヤードなどへの入庫・出庫も荷役作業に含めています。
物流実務では、倉庫内での運搬や入出庫に加え、積み付け、仕分け、ピッキング、荷揃えなども荷役業務として扱われることがあります。作業方法も、人の手によるものだけでなく、フォークリフトやクレーンなどの荷役機械を使用するものまでさまざまです。
つまり、荷役は単独の作業名ではなく、貨物を移動・取り扱う複数の工程を広く表す言葉として使われています。
荷待ちと荷役作業の違い
荷待ちと荷役作業は、どちらも物流現場で発生しますが、意味は異なります。
物流効率化法上の荷待ち時間は、集荷・配達場所などにおいて、荷主や施設管理者等の都合により貨物の受け渡しを待っている時間を指します。一方、荷役作業は、実際に貨物を積み込んだり荷下ろししたりする作業です。
| 項目 | 主な内容 |
| 荷待ち | 荷主や施設管理者等の都合により、貨物の受け渡しなどを待機する時間 |
| 荷役作業 | 荷積み・荷下ろし、入出庫など、実際に貨物を取り扱う作業 |
荷役などの附帯業務に従事している時間は、荷待ち時間とは分けて扱われます。物流業務にかかる時間を見直す際には、待機している時間と実際に作業している時間を分けて考えることが大切です。
荷役作業の主な種類
荷役作業には、輸送車両への積み込みから倉庫内での運搬、出荷前の荷揃えまで、さまざまな工程があります。必要な作業は、貨物の大きさや重量、荷姿、倉庫設備、配送方法などによって変わります。代表的な作業内容を知っておくと、物流工程のどこで荷役が発生しているのかを捉えやすくなります。
積み込み・荷下ろし
積み込みは、倉庫や工場などからトラックやコンテナといった輸送機器へ貨物を載せる作業です。荷下ろしはその反対で、到着した輸送機器から貨物を取り出す作業を指します。
比較的軽い荷物は人の手で扱う場合がありますが、重量物やパレット積みの貨物ではフォークリフトやクレーンなどが用いられます。
積み込みでは、車両の積載条件や貨物の重量・形状を踏まえ、輸送中に荷物が動きにくい配置にすることも重要です。荷下ろしでは、配送先で貨物を安全かつ円滑に取り出せるよう、積み付けの段階から作業性を考えておく必要があります。
運搬・入出庫
運搬は、倉庫や物流センター、工場などの敷地内で、貨物を必要な場所へ移動させる作業です。荷物の大きさや重量に応じて、人力、台車、フォークリフトなどを使い分けます。
入庫では、荷受けした貨物を所定の保管場所へ移し、必要に応じて数量や状態などを確認したうえで保管します。出庫は、出荷対象となった貨物を保管場所から取り出し、次の工程へ送る作業です。
倉庫内では入荷から保管、出荷までに貨物が複数回移動することもあります。そのため、保管場所や通路を工夫し、不要な移動を減らせる動線にすることで作業負担の軽減につながります。
仕分け・ピッキング
仕分けは、貨物を配送先や商品種類、出荷条件などに応じて分ける作業です。一方、ピッキングは、出荷指示に基づいて保管場所から必要な商品を必要な数量だけ取り出す作業を指します。
どちらも出荷内容を正しくそろえるために重要な工程です。商品や数量を取り違えると誤出荷につながるため、伝票やシステム上の指示に沿って作業を進めます。
商品数や出荷件数が多い倉庫では、作業者が長い距離を移動しなくても済むよう、出荷頻度などに応じて保管場所を工夫する方法もあります。正確さだけでなく、作業のしやすさも考慮することがポイントです。
積み付け・荷揃え・荷締め
積み付けは、貨物をパレットや車両などへ安定するように配置する作業です。荷揃えは、出荷する貨物を配送先や便ごとに集め、積み込みや次の工程へ進みやすい状態にそろえる作業を指します。
荷締めは、車両などへ積載した貨物が輸送中に動いたり荷崩れしたりしないよう、ベルトやロープなどを使って固定する作業です。
貨物の重量や形状、積載方法によって適した方法は異なります。特に重量や高さに偏りがある積み付けでは貨物が不安定になる場合があるため、荷姿や輸送条件に合わせて作業方法を決める必要があります。
荷役作業で使われる主な機械
荷役作業では、人力だけでなくさまざまな機械や設備が利用されています。重量物や大量の貨物を扱う際に機械を活用することで、人力だけに頼る場合と比べて作業負担を軽減しやすくなります。機械ごとに用途が異なるため、代表的なものの特徴を見ていきましょう。
フォークリフト
フォークリフトは、車体前方に設けられたフォークをパレットなどに差し込み、貨物を持ち上げて運搬する荷役運搬機械です。
倉庫や物流センターでは、トラックからの積み下ろし、パレットの構内運搬、保管場所への格納など、幅広い荷役作業で利用されています。人の手だけでは扱いにくい重量物や、多くの貨物をまとめて運ぶ際に役立ちます。
車種やアタッチメントにも複数の種類があり、貨物や作業環境に合ったものを選ぶ必要があります。運転に必要な資格・教育については、後半の資格に関する項目で解説します。
クレーン
クレーンは、フックなどにつないだ貨物をつり上げ、上下方向や水平方向へ移動させる機械です。人力やフォークリフトでは扱いにくい大型・重量物の荷役などに使用されます。
工場や倉庫などに設置されたクレーンのほか、車両などに搭載・設置されるタイプもあり、作業内容に応じて使い分けられています。
貨物をつり上げる際は、重さだけでなく重心や形状、使用するつり具などを踏まえて作業方法を決める必要があります。クレーンの運転や玉掛けに必要な資格については、後半で詳しく取り上げます。
コンベヤ
コンベヤは、ベルトやローラーなどによって貨物を一定の経路で連続的に搬送する設備です。物流センターでは、入荷した商品の移動や仕分け工程、出荷場所までの搬送などに使用されています。
決められた経路を連続して搬送できるため、大量の商品を扱う現場では人が荷物を持って往復する作業を減らしやすくなります。
一方で、コンベヤには可動部分があるため、使用方法を誤ると巻き込まれなどの事故につながるおそれがあります。通常運転時だけでなく、清掃や点検などを行う際も、定められた手順に沿って作業することが必要です。
荷役作業で起こりやすい事故・リスク

荷役作業では、高所での作業や重量物の取り扱い、荷役運搬機械との混在など、事故につながるさまざまな要素があります。事故を防ぐには、まず現場でどのような危険が生じるのかを知っておく必要があります。ここでは対策の説明と重複しないよう、代表的な事故・リスクに絞って解説します。
荷台などからの墜落・転落
トラックの荷台では、貨物の積み込み・荷下ろしだけでなく、荷締めや荷解き、シートの掛け外しなどを行う場合があります。荷台には一定の高さがあるため、足を踏み外したり、荷物の上で体勢を崩したりすると墜落・転落につながるおそれがあります。
特に、あおりや不安定な貨物の上に乗って作業する場面、雨などで足元が滑りやすくなっている場面では注意が必要です。
地上では問題になりにくい小さな段差や足元の不安定さも、荷台上では大きな事故につながる可能性があります。荷台周辺では、高さがある場所で作業しているという意識を持つことが重要です。
荷役運搬機械との接触
フォークリフトなどの荷役運搬機械が稼働する場所では、歩行者や他の車両との接触・衝突事故が起こる可能性があります。
倉庫内では、棚や積荷によって見通しが悪くなったり、車両と歩行者が近い距離で行き交ったりする場所もあります。フォークリフトに貨物を積載している場合は、進行方向の視界が制限されることもあるため注意が必要です。
また、歩行者側から機械の進行方向や動きを把握しにくい状況もあります。荷役運搬機械と人が同じ場所で作業する現場では、接触事故が起こる可能性を前提に安全対策を考えなければなりません。
荷崩れ・貨物の落下
積み付けや荷締めが不十分な場合、輸送中に荷崩れが生じ、荷下ろし時に貨物が落下するおそれがあります。倉庫内でも、積み方が不安定だったりパレットが破損していたりすると、貨物が崩れる可能性があります。
特に、荷室の扉やトラックのあおりを開ける場面では、輸送中に貨物が移動していないか注意が必要です。外からは荷物の状態を確認しにくいこともあるため、扉を開けた瞬間に貨物が落下するケースも考えられます。
大型貨物や重量物の落下は重大な事故につながるおそれがあるため、積み付けから荷下ろしまで一連の作業として考える必要があります。
重量物による身体への負担
人力で重い荷物を持ち上げたり、繰り返し運搬したりする作業は、腰や肩など身体への負担につながります。荷物そのものが重い場合だけでなく、中腰やひねった姿勢での作業を繰り返す場合も負担が大きくなります。
荷役作業では、狭い場所で貨物を移動させたり、荷台から商品を取り出したりすることもあり、常に作業しやすい姿勢を取れるとは限りません。
身体への負担は、貨物の重量だけでなく、大きさや持ちやすさ、作業姿勢、移動距離、作業回数などにも左右されます。現場の作業条件を踏まえて対策を考えることが必要です。
荷役作業の安全対策・注意点
荷役作業の安全性を高めるには、個々の作業者に注意を求めるだけでは不十分です。作業計画や設備、作業場所の動線、荷主と運送事業者の連携などを含めて対策する必要があります。現場によって作業条件は異なるため、実際の業務に合わせて安全対策を組み立てていきましょう。
作業計画・作業手順の明確化
荷役作業を始める前に、取り扱う貨物、使用する機械、作業場所、作業方法などを明確にしておくことが重要です。現場で急に作業内容が変わると、必要な人員や設備がそろわないまま作業を進めることになりかねません。
特にフォークリフトなどを使用する場合は、貨物の種類や重量、運行経路、作業場所の状況などを踏まえて作業計画を立てます。
誰がどの工程を担当するのか、どの順番で作業するのかをあらかじめ共有しておけば、現場での認識違いや無理な作業の防止につながります。通常とは異なる荷物を扱う場合も、その場の判断だけで作業を始めないことが大切です。
保護具・作業環境の整備
荷役作業では、作業内容や場所に応じて安全靴や保護帽などの保護具を適切に使用します。ただし、保護具を身につけるだけでなく、作業場所そのものを安全な状態に整えることも欠かせません。
床面に凹凸がある場所や滑りやすい場所、十分な照明がない場所では、転倒や接触のリスクが高まります。荷物や資機材が通路にはみ出していれば、人や荷役機械の通行にも影響します。
荷台での作業では、作業内容に応じて昇降設備などを利用することも重要です。現場にある危険を洗い出し、作業者が無理な姿勢や方法を選ばなくても済む環境を整えましょう。
荷役機械と歩行者の動線分離
フォークリフトなどの荷役機械と歩行者が同じ場所を行き交う現場では、可能な限り双方の動線を分けることが重要です。
たとえば、安全通路を設けたり、機械の走行区域を床面表示などで分かりやすくしたりすることで、人と機械の進路が重なる場面を減らせます。交差部や見通しの悪い場所では、ミラーや注意表示などを活用する方法もあります。
ただし、一度動線を決めれば終わりではありません。保管場所や貨物量が変わると、当初設定した通路が使いにくくなる場合があります。作業量や貨物の配置が変わった際には、動線もあわせて見直しましょう。
荷主・運送事業者間の連携
荷役作業は、運送事業者の施設だけでなく、荷主や配送先の事業場で行われることがあります。そのため、安全対策を運送事業者側だけで完結させることはできません。
荷役作業の有無、貨物の種類・重量、使用する機械、作業方法などを事前に共有し、誰がどの作業を担当するのかを明確にしておくことが重要です。荷主側が管理する荷役設備や作業場所についても、安全に作業できる環境を整える必要があります。
現場に到着してから想定外の作業が発生すると、必要な設備や人員、資格を確保できない可能性があります。契約や依頼の段階から作業条件をすり合わせておくことが、安全な荷役につながります。
荷役作業に関係する資格・ガイドライン

荷役作業そのものに一律の資格が必要なわけではありません。ただし、フォークリフトやクレーン、テールゲートリフターなどを使用する業務では、機械の種類や能力、作業内容に応じて免許・技能講習・特別教育が必要です。実際に担当する作業に合わせて、必要な資格や教育を確認しておきましょう。
フォークリフトの資格
フォークリフトの運転では、最大荷重によって必要な資格・教育が異なります。
最大荷重1t以上のフォークリフトを運転する業務では、フォークリフト運転技能講習を修了した人が運転する必要があります。最大荷重1t未満のフォークリフトでは、フォークリフトの運転業務に関する特別教育が必要です。
| フォークリフトの最大荷重 | 必要な資格・教育 |
| 1t以上 | フォークリフト運転技能講習 |
| 1t未満 | 特別教育 |
倉庫や物流センターでフォークリフトを使用する場合は、使用する車両の最大荷重を確認し、担当者が必要な講習・教育を修了している状態で作業を行うことが必要です。
クレーン・玉掛けの資格
クレーンの運転に必要な資格は、つり上げ荷重だけでなく、クレーンの種類や操作方式によって異なります。
たとえば、つり上げ荷重5t以上の一般的なクレーンでは、クレーン・デリック運転士免許が必要です。一方、床上で操作し、運転者が荷とともに移動する床上操作式クレーンでは、つり上げ荷重5t以上でも床上操作式クレーン運転技能講習の修了によって運転できる範囲があります。つり上げ荷重5t未満のクレーンでは、原則として特別教育が必要です。
移動式クレーンの場合は、つり上げ荷重5t以上では移動式クレーン運転士免許、1t以上5t未満では小型移動式クレーン運転技能講習、1t未満では特別教育が必要となります。
また、玉掛け作業についても、使用するクレーン等のつり上げ荷重に応じて技能講習または特別教育が必要です。実際の機械や作業条件に合わせて必要な資格を確認しましょう。
テールゲートリフターの特別教育
テールゲートリフターは、トラックの荷台後部などに設けられた昇降装置で、貨物や台車を地上と荷台の間で移動させる際に使用されます。
2024年2月1日から、荷を積み込む・荷下ろしする作業を伴うテールゲートリフターの操作業務は、労働安全衛生法令に基づく特別教育の対象となっています。対象となる業務を担当する労働者には、所定の学科教育と実技教育が必要です。
テールゲートリフターの操作には、昇降板を上げ下げする操作だけでなく、展開や格納などが含まれる場合があります。業務で使用する事業者は、実際の作業内容が特別教育の対象となるか確認したうえで、必要な教育を行いましょう。
荷役作業安全ガイドライン
厚生労働省では、陸上貨物運送事業における荷役作業中の労働災害を防止するため、「陸上貨物運送事業における荷役作業の安全対策ガイドライン」を策定しています。
ガイドラインは2023年3月に改正され、荷役作業を行う陸運事業者だけでなく、荷主等が取り組むべき事項も示されています。安全衛生管理体制や安全教育、作業場所・設備の整備、陸運事業者と荷主等との連絡調整など、荷役作業を安全に行うための考え方がまとめられています。
自社独自のルールだけで安全対策を決めるのではなく、公的なガイドラインや関係法令も踏まえながら、実際の作業環境に合った対策を整えることが重要です。
まとめ | 荷役作業の内容と安全対策を押さえよう
荷役作業は、貨物の積み込み・荷下ろしをはじめ、倉庫への入出庫や運搬など、物流のさまざまな場面で発生する作業です。物流実務では、仕分けやピッキング、積み付けなども荷役業務として扱われることがあります。フォークリフトやクレーンなどの機械を使用する場合には、作業内容に応じた資格や教育も必要です。
安全に荷役を行うには、作業手順や作業環境、機械と歩行者の動線を見直すだけでなく、荷主と運送事業者が事前に作業条件を共有することも欠かせません。
当社では、倉庫での保管からピッキング・梱包・発送、自社車両による配送まで一貫して対応しています。倉庫業務や輸配送を含めた物流体制の見直しをご検討の際は、お気軽にご相談ください。